ラストエンペラーの宮殿跡 8/9 その3 [旅行記(中国編)]
それでは長春旅行記の最後です。
ここからの続きです。
もう一箇所、長春で行きたい場所がありました。
溥儀が皇帝として過ごした宮廷です。
当初は地質宮を作るまでの仮宮殿とされていたのですが、
結局、在任中には地質宮が完成せず、ここで執政しました。
今は偽満皇宮博物院として公開されています。
南湖公園からはバス。新民大街を歩いている時に、
264路のバスが偽皇宮行きだなっていうのをチェックして
あったんです。
旧満映の長春電影制片廠跡前からバスが出ています。
途中の紅旗街では54路の路面電車も見かける
ことが出来ました。
土日かけて歩き回った道を通り、市内北東部の
偽満皇宮に到着です。
入ってすぐにある案内板。
「また日本が武力で中国東北を侵略し、偽満洲国をでっちあげ、
ファシズム植民地支配を推し進めた歴史的な証です。」って
書いてあるけれど、これを見るだけではファシズムかどうかは
わからないよ。
建物にも「典型的な植民地的特徴があります。」なんて言いながら、
しっかりとAAAAA級旅遊景区にはしているんだから。
北西の興運門から入って参観開始。
入り口とここと2箇所で入場券チェックです。
入ってすぐにあるのが宮内府。
宮廷の事務をとりしきるお役所です。
北京や瀋陽の故宮を思わせる四合院造りになっています。
博物館なので、中には展示があります。
偽満洲国に携わった日本人や中国人役人の写真が
ずらっと。もちろんネガティブなコメントつきで。
あ、今更ですが、中国では「満洲国」のことを「偽満洲国」と
呼びます。満洲独立を認めておらず、当時も中国の一部
だったので、偽の国ってことで偽満洲国。
ちょっと寂しい西御花園を通り過ぎて、大きな建物群に
近づきます。南から順に見ていきます。
まず最初が緝熙楼。
でも、建物の前の大きな石碑が気になります。
勿忘”九.一八” 江沢民
九.一八忘れること勿れ。
9.18とは日本で言う満州事変のこと。
抗日愛国教育を推進した江沢民の署名入りです。
何もこんなところにこんなもの作らんでもいいのにね。
話がそれましたが、緝熙楼は皇帝溥儀とその妻たちの
住居の場。
中には彼らの写真がたくさん展示されています。
下の左の写真は見たことのある溥儀の写真ですね。
1階は妃譚玉齢のエリア。
溥儀の書斎に蝋人形があって、いきなりだったので、
ちょっとびっくりしちゃいました。
こちらが溥儀の寝室。
布団よりもタオルケットを愛用していたんだとか。
そしてこちらが皇帝媛容の寝室。
溥儀がここを訪れることは一度もなかったという。
「冷宮」されていた媛容はすることもなく、隣りの喫煙室で
アヘン漬けの毎日。
その隣りにあるのが勤民楼。
ここが政務の場。
西便殿が溥儀の執務室。非公式な面会なんかも
ここで行われていたところ。
隣りの東便殿が公式謁見殿。
日満議定書が調印されたのもここ。このテーブル。
玉座もしっかりここにあります。
1階にはいろいとお付きの部屋があるんですが、その中の
一つが関東軍参謀吉岡安直の事務所。
溥儀を裏で操った、ドラマでとよく出てくる彼ですね。
その隣り、いちばん北にあるのが懐遠楼。
礼記の「遠人を柔らげれば四方に帰させ、諸侯を懐すれば、
天下に畏れさせる」という文から溥儀が封建帝王専制を
復活させる願いを込めて命名したもの。
1階には侍従武官処や帝室会計審査局といった
お付きの部屋が並びます。
そして2階が清国皇帝である祖先を祀る奉先殿。
歴代皇帝の遺影と位牌が並びます。
もともとは勤民殿の仏堂で先祖を祀っていたのを
懐遠楼完成にあわせて大きくして移したもの。
溥儀としてはやっぱり傀儡なんかで収まるつもりはなくて、
大清帝国の復興を信じていたんだろうね。
プライドもあっただろうし。
懐遠楼の2階の渡り廊下にはここを訪れた内外の
著名人の写真がずらり。
その中で、中曽根さんの写真を発見。
元首相の中では小泉さんと並んでこういった場所に
ふさわしくなさそうな人ですが、来ていたんですね。
渡り廊下を突き進んでいったら、自分がどこに
いるのかよく分からなくなりました。
ここは便見室。
溥儀が関東軍高官や満洲国総理大臣らと面会した
部屋です。
自分がどこにいるか分からなかったので、とりあえず
外に出てみました。
そうしたら、分かりました。懐遠楼から嘉楽殿も通り抜け、
同徳殿まで来ていたようです。
同徳殿は日本人設計により1938年に完成。
皇宮の中で最大の建物で政務と居住を兼ねた場所であった。
しかし、日本人による盗聴を恐れた溥儀はここで暮らす
ことはせず、1943年に入内した李玉琴が入っただけだった。
この同徳殿のホールは映画「ラストエンペラー」にも
登場した場所らしいけど、映画を見ていないので、
ピンとこないんだよな。北京を行った後にも見ようと思った
けど、改めて見ないとなと痛感。
で、ここであることに気付く。
まだまだ皇宮のど真ん中にいるにも関わらず、空港に向けて
出発しようと決めていた時間に既になっていることを。
それでもしぶとく、駆け足で東御花園を回ります。
ここには防空壕が残されています。
真ん中にある天照大神防空洞は中に入れないのですが、
隅っこにある御用防空洞は階段を下って中まではいることが
出来ます。
でも、さすがに下っていると飛行機に乗れなくなるので、
ここはパス。走って出口まで向かいます。
もちろん、途中にある愛国教育施設の東北淪陥陳列館はスルー。
復元された建国神廟跡も少し足を止めただけです。
ぐるっと回って、お土産屋の並ぶ前を通り抜けて出口へ。
ホントはバスで空港に行こうと思っていましたが、
タクシーで空港に向かいます。
バスだったら20元のところ、タクシーの運賃は
メーターを使わずに100元だと。
ごねてやろうかと思いましたが、乗り遅れるのも嫌なので、
しぶしぶ受け入れてやりました。
が、しかし、これからがトラブル続きだったのです。
タクシーの運転手が携帯で誰かと話していたかと思うと、
「俺の友達が、空港に客を迎えに行くらしいから、
お前はそっちに乗り換えろ」とのたまう運転手。
抗うすべもなく、途中で停められ、乗り換えです。
どうせ空で空港に行く変わりに俺が乗るんだから、
負けてくれてもよさそうなのに、やっぱり100元払えとさ。
そして、乗り換えたタクシーで空港に向かったんですが、
今度は空港への高速へ繋がる道が渋滞で動かない。
運転手も舌打ちしていますが、俺も気が気じゃなくなってきた。
渋滞を抜けて高速に乗って、運転手も追い越し車線を
疾走してくれたので何とかなるなと思ったら、
今度は高速が工事で車線規制。
遅い車の後ろをひたすらと。
区間中ずっとじゃなかったので、規制が終わったら
またぶっ飛ばしてもらいましたけど。
結局、長春空港のチェックインの締め切りが30分前の
ところ、35分前に空港に到着。
ギリギリでなんとか間に合いました。
運転手さんありがとう。彼も迎えに行く客との約束もあるから、
ちょっと焦っていたみたいだけど。
空港についてもやることはないので、そのまま搭乗口へ
向かおうと安全検査に行ったんですが、ここでも機械の
トラブルで、しばらく待たされました。
搭乗口についたら既に搭乗中だったので、そのまま機内へ。
遅れずに乗れてよかったなぁと思いながら、離陸を待って
いたんですが、一向に動かない飛行機。
ちょっと嫌な記憶が脳裏をよぎります。
しばらくすると機長からのアナウンス。
北京が雷雨のため、北京空港に着陸が一切出来ない状況となり、
北京向けの離陸許可が出ないとのこと。
やっちゃいました。
上海と長春の間にも直行便はあるんですが、スターアライアンス系で
行きたいなと思ってCAで北京経由にしたのが裏目に出ました。
上海行きのフライトはしっかり飛び立って行きましたから。
上海に帰れなかったらどうしようと思い始めたら、突然
バックを始める機体。結局2時間弱遅れで離陸です。
飛ぶと分かってから我に返ったのが、北京から乗り継ぐ
上海便のこと。乗り継ぎ時間は1時間くらいで設定して
いたから、2時間遅れだと完全に乗り遅れる。
どうしようかなと思ったら、隣の席の欧米人も乗り継ぎが
あるらしく、アテンダントに聞いています。
すると、便名を確認することなく、北京便は全便遅れているから、
乗り継ぎ便もきっと遅れているはずだから大丈夫との答え。
北京に着いて乗り継ぎカウンターで便名と時刻を告げた時に、
もう過ぎてるじゃないのと変な顔をされた時には行っちまった
のかなと不安になりましたが、しっかりリスケジュールされて、
俺の乗る飛行機はまだ飛んでいませんでした。
それにしても、北京についたら全便遅延だらけで、
ディスプレーが真っ赤になっていました。
ロビーで寝ながら待っている人もたくさんいましたね。
結局上海へのフライトも2時間遅れで離陸。
なんとか日付の変わる前に家に帰ることができました。
改めて、中国国内線はこれがあるから怖いなあと痛感。
聞いた話だと、北京に降りられず、天津空港に降りた
フライトもあったらしい。天津に着いたら乗り継げず、
帰れなかったかもしれないことを考えると、不幸中の
幸いだったのかな。
多めに持っていった本をしっかり読むことができたし。
最後がドタバタして何がなんだったのかよく分からなく
なってきましたが、教科書や小説で知った場所をこの目で
確かめて、満洲国という歴史の一ページを身近なものに
することができた旅でした。
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はじめまして。現在仕事で長春に住んでいます。
満州国の建築物を土日に少しずつ写真に撮って
います。今撮らないと壊されてしまいそうな
気がするので(笑)。
ブログ、とても興味深く拝見しました。
ありがとうございます。
by れな (2012-05-06 01:06)