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大地の子 [読書記]

本当は他にも書くべきことがありますが、
心を落ち着かせてからということで、先週の出張で、
読み終えた本のことを書きます。

「二つの祖国」、「不毛地帯」とともに、
山崎豊子の戦争三部作と呼ばれるその代表作です。

大地の子〈1〉 (文春文庫)

大地の子〈1〉 (文春文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1994/01
  • メディア: 文庫

「中国残留日本人孤児」の陸一心。養父母の愛に支えられ
ながら、幾多の苦難を乗り越え、中日合作の「宝華製鉄」
プロジェクトに携わっていく。
その過程で、生き別れになった妹との再開、そして、
日本の本当の父との再会を果たすが、中国人として
生きている一心の葛藤ははかりしれない。
緻密な取材を重ねた事実を基にした、壮大な人間ドラマ。

上川隆也が主演して、NHKでドラマ化されていたので、
その存在は知っていたものの、読んでいなかった作品。
「沈まぬ太陽」を読んでから、山崎豊子作品をいろいろ
読んでますが、やっぱりその集大成としての「大地の子」は
読まなきゃいけないだろうということで、満を持して
読み始めました。

家族愛、実の親と育ての親、親友との友情、文革の功罪、
中国の体質、その他いろんなテーマがこの作品には
根底に流れています。
それを緻密にいろんな話を織り交ぜながら、大きな本流に
つなげていく山崎豊子のうまさにどんどん引き込まれていきます。

でも、やはり一番大きなテーマは日本人戦争孤児の問題でしょう。
終戦間際に、関東軍が棄民をしていなければ。
日本政府が縦割りでなく、人民のための思った対応が
すぐに取れていたならば。
中国が無駄に反日感情を煽る教育をしていなければ。
そして、文革なんておかしなことがなければ。
なんていろんな想いが募ります。

子供の頃、大挙して日本にやってくる「中国残留日本人孤児」
の来日調査をみて、「こんなおっさん、おばさんで孤児もないだろう」
とか、「日本人でも中国で育てば中国人と一緒だな」なんて
軽い気持ちで思っていた自分の態度をとても恥じています。

どうして、そんな年になるまで自分が日本人であることを
名乗れなかったのか。それを知らずに言っていたわけですから。

中国で仕事をするビジネスマンとしては、中国ビジネスの
入門書としての性質もあるよななんて思ってみたり。

陸一心=松本勝男とその日本の父松本耕次が
情熱を込めて立ち上げた宝華製鉄の所在地は上海。
そのモデルとなった宝山製鉄(現、宝鋼集団)に対する
目もちょっと変わってきます。
今度、長江のほとり、宝山まで行ってみようかなと思っています。

そして、去年オリンピックの時に瀋陽には行きましたが、
満州の地にも、もう一度行ってみたいと思います。
勃利とかは無理だとしても、長春とかには。

改めて、中国に関わる日本人には必読の本だよなと
痛感した本でした。

 



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大地の子〈2〉 (文春文庫)

大地の子〈2〉 (文春文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1994/01
  • メディア: 文庫

大地の子〈3〉 (文春文庫)

大地の子〈3〉 (文春文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1994/02
  • メディア: 文庫
大地の子〈4〉 (文春文庫)

大地の子〈4〉 (文春文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1994/02
  • メディア: 文庫
二つの祖国〈上〉 (新潮文庫)

二つの祖国〈上〉 (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1986/11
  • メディア: 文庫

不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))

不毛地帯 (第1巻) (新潮文庫 (や-5-40))

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/03
  • メディア: 文庫

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

  • 作者: 山崎 豊子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2001/11
  • メディア: 文庫
  • 大地の子 全集 [DVD]

    大地の子 全集 [DVD]

    • 出版社/メーカー: NHKエンタープライズ
    • メディア: DVD

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コメント 2

MEwmew

あらっ!
何か重大問題発生なんですか?

>大地の子
当方も本は読んでいません。
NHKでのドラマを観ました。
残留孤児の方のことを
深く知ろうとするには、
中国のあの文革の時期を
避けて通るわけにはいかないようです。

ただ興味から知りたいと思い、
その他にも最後の皇帝 溥儀さんの弟
愛新覚羅溥傑さんの妻 浩(ひろ)さんの
ドキュメントなどを観たり、
四人組のことを書いた読み物を
読んだりしています。
勿論、映画のラストエンペラーも観ました。

中国で時々
“旧日本軍の亡霊”のような
日本(政府?)が出てくることを
許さないのは仕方ないと思います。
ツライ仕打ちを受けたことを
記憶している人々がたくさん
現在でもおられるのですから。
そんな社会の中でガンバッて働いている
teddyさん、
自らそれを体感すべく
いろんな中国を見て歩くのは
とても素晴らしいことだと
感服しております。

亡父が戦争中
図らずも戦った満州などを辿る旅を
亡くなる数年前からしていました。
中国の方を傷付けた訳では
決して無いものの、
進軍したという事実に心を痛めていたのは
嘘ではありません。
ですからその旅は、
きっと両国への鎮魂のためのものだったと
信じています。

そういう意味ではまだまだ戦後なのですね。

teddyさんのような若者が
歴史に向き合っておられることに
明るいモノを感じました。

(何だか長文になりスミマセン!)
by MEwmew (2009-06-29 02:15) 

Teddy

>MEwmewさん
心を落ち着かせるべきことはサッカーねたなので、
それはそれで大丈夫です・・・。

歴史を学ぶことは、同じ過ちを繰り返さないため
であるにも関わらず、自らの正当性を飾り立てる
ツールとしか思っていないお上の人たちや、
自分たちが嫌いな「日帝」と同じ「過ち」を
繰り返している姿をみると憤りを感じたりしますけどね。

本人旅好きなのと、好奇心で行ってみたいなと
思うだけです。そんなに高尚なものではないですよ。
by Teddy (2009-06-29 17:58) 

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